日本企業の海外展開に必要な5つのヒント

2025. 11. 25

マーシャル・トーリー / 事業成長マネージャー

海外展開を目指す日本企業のために、アジアの独立系エージェンシー4社が集結。国ごとに異なったルールで動くグローバル市場で、事業を成功させるための条件について議論しました。登壇したアジアン・マーケティング・ネットワーク(AMN)のメンバーは、中條あや子(Eat Creative)、スティーブン ベリー(Stepworks)、デーヴィッド・ケッチャム(Current Asia)、ケヴィン・チェン(GTE )。モデレーターは、シルベスタ典子(キャンドルウィック)が務めました。

1. 目標は同じでもルートは別々 

パネリスト全員が合意した核心的な真実は、どの国にもビジネスを進める独自のオペレーティングシステムが存在するということ。信頼を獲得して成長につなげる目標は同じでも、そこまでに至る道筋は異なります。日本企業が、国内のプロセスを輸出しようとするのは悪手。市場ごとに異なった複数システムを駆動させながら、本当に重要な成果だけを目指すことが海外での成功につながります。

2. 精度と速度のトレードオフ 

高い基準を設定して慎重に稟議を回す日本企業は、品質の保証に長けています。その反面、変化の速い市場では意思決定の遅さによって商機を逸しかねません。さらに日本企業にありがちな問題は、各国の販売代理店に依存しすぎる傾向です。本社と顧客の距離が広がると、ブランドのストーリーがうまくコントロールできなくなります。このような課題の解決策も単純なものではなく、適切なシステムを構築することが鍵になります。すなわち市場を深く理解した現地チームに権限を委譲しながら、フィードバックループを短縮し、本社の承認が必要な事項とスピード重視の事項をあらかじめ明確に分けておくことです。

3. 適切なテンポの選択 

本国と現地の文化的な違いは、海外進出の直後から明らかになります。中国や米国のような市場は、スピードと反復が大事。日本や欧州の多くは、プロセスと原則が重んじられます。どちらのアプローチが優れているのかという問題ではなく、現地ごとに最適なテンポがあるということです。一気呵成に攻めるべきときもあれば、タイミングを合わせるためにスローダウンするときもあります。焦りからスピードを上げたり、怖れからスピードを下げたりするのは禁物。現地と本国の協業バランスが崩れる原因になります。

4. 目的と手段の峻別 

目的と手段を混同しないこと。目的はあくまで成果(商業的インパクトやブランド浸透度の数値目標)によって定義し、そこに至る手段については現地チームに一定の裁量を与えたほうがいいでしょう。最初から目的について全員が合意していれば、それを実現する方法、タイミング、表現などについての議論を冷静に深めることができます。チーム内での不要な駆け引きもなくなるでしょう。

5. 意思疎通で誤解を回避 

国をまたいだ業務を効率化するには、重層的なアプローチも必要になります。まずは文書レベルで事実の認識を確定し、次に対面の議論でニュアンスを汲み取り、さらに非公式な会話で信頼を構築しましょう。特に日本の組織にありがちなのは、外部から不可解に見える意思決定で不信を招くこと。意思決定の背景にある「理由」をていねいに説明し、内部の意思決定プロセスを相手に開示し、次のステップまでを事前に伝えておくことが大切です。内部の事情をしっかり共有することで、海外パートナーの失望を招かずに組織の限界を理解してもらえます。

まとめ

文化の違いが、常に障壁となる訳ではありません。違いを乗り越えた先で、新しい強みを手にすることができます。成功している日本のリーダー企業は、国によってまちまちな仕事の進め方に精通しています。現地の事情を細かく理解してから決断し、売り上げの数値だけではなく浸透度や影響力でも成果を測ります。日本らしい緻密さにグローバルな柔軟性とスピードが融合すれば、妥協をはるかに越えた競争優位性が手に入るのです。

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