いいチームの秘訣

2020. 05. 29

スティーブ・マーティン / Eat Creative共同創業者

早いもので、Eat Creativeは今年で20周年を迎えました。どのように祝うかアイデアを巡らせはじめた矢先に外出自粛となり、先の見通しも立たない状況にあります。思い返してみると、Eat Creativeはこれまでさまざまな課題を乗り越えてきました。2000年の創業時にはドットコムバブルが崩壊し、2001年にはアメリカ同時多発テロ、2008年にはリーマンショック、そして2011年には東日本大震災と、その歴史は社会情勢の変化とともにあったことに気づかされます。

一方で、悲観的なことばかりというわけでもなく、今日まで自分たちの理念を信じ、活動をつづけることができました。これまでの経験から学んだのは、こうした課題に立ち向かう鍵は「人」である、ということです。いいチームをつくることがクリエイティブの質につながり、ひいてはビジネスの礎になります。

こうして見るとわかるのは、これまで以上に人事部門の果たす役割が重要になっていることです。組織の大小に関わらずダイバーシティとインクルージョンが重視され、サステナビリティもまた、これまで以上に注目されています。今日このことばが意味するのは環境保護としての側面だけでなく、社会の変化に適応し、これから先の未来においても成長しつづけられるかどうか。組織に関わるすべての人びとにとって、よりよいシゴトを創出するために最適な環境を実現することが、人を呼び寄せ、定着してもらうための第一歩なのです。

企業や組織には、ひとつとして同じものはありません。Eat Creativeは日本企業でありながら、さまざまな国籍のスタッフが働いており、それぞれ年齢もバックグラウンドも違います。日本で家庭をもっているスタッフも、海外に家族がいるスタッフもいます。東日本大震災や新型コロナウイルスの感染拡大といった社会的に大きな影響を及ぼす出来ごとがあると、嘘と真実が交差することもあいまって、不安にさいなまれたりします。そんなむずかしい状況に立ち向かう方法も、スタッフによって異なるのです。組織には、こうした違いにも敏感で、臨機応変であることが求められます。 

Eat Creativeのような小さなチームには、メリットもデメリットもあります。メリットとしては、スタッフがそれぞれ自分に合った働き方を選べる点です。ここでは、私たちの取り組みを例として挙げてみます。

Eat Creativeでは、日々の取り組みを人間関係に例えています。そこに求められるのは誠実さです。ビジネスとしては、スタッフには質の高いクリエイティブをスケジュール通りに実現してもらいたい、ということが根底にあります。チームメンバーが互いにコミュニケーションを取り合い、それぞれのプロジェクトにおけるタスクを、必要なときまでに実行することが理想です。そのためには、スタッフにとって最適な環境をつくることが重要なので、フレキシブルな働き方を選べるように努めています。始業時間と終業時間も人それぞれで、働くのは自宅でもオフィスでもかまいません。休暇も自分のタイミングで取れます。もちろん、いくつかルールはあります。それでも一人ひとりのスタッフにとって、どんな働き方がベストなのか、いつも配慮してきました。

誠実さとチーム内での円滑なコミュニケーション、柔軟な働き方は、かつてないほど重要になっています。コロナウイルス感染症がいまだ収束の兆しを見せないなか、組織はより柔軟で「人間らしく」あることを求められているのです。