動画コンテンツの今

2020. 09. 29

「Video is king(動画こそがコンテンツの王様)」

デジタルマーケティングの分野で、動画の活用がさけばれて久しい。今回インサイトでは、そのなかでも「Branded video」と呼ばれる動画コンテンツに焦点を当てよう。動画コンテンツは、ブランディングにおいてどのような役割を果たすのか。それは、ブランドがロゴ以上の存在であるという事実にも深くひもづいている。


Branded videoとは

Branded videoを一言で表せば、「ブランドのエッセンスを反映したクリエイティブな動画コンテンツ」ということになる。より重要なのは「クリエイティブ」と「コンテンツ」の部分であり、ブランドはロゴやプロダクトプレイスメントといった要素のほか、表現方法やビジュアルディレクションから感じ取れるものとして顕在化する。

Branded videoは近年これまで以上に注目を集めるようなっており、YouTubeなどの動画配信プラットフォームもその一助となっている。ソーシャルメディアにおけるアルゴリズムも動画コンテンツに優位にはたらき、デジタルマーケティングキャンペーンなどでも推奨されるメディアとして知られるようになった。

Branded videoの定義には当てはまらないにしろ、ブランドが配信する動画コンテンツの歴史は、1920年代までさかのぼる。動画コンテンツを初めて活用したブランドのひとつにシェルがあり、ユニリーバやフォードなどがその後を追った。1950年代に入りテレビが普及しはじめると、ブランドはより短い動画を配信するようになる。テレビコマーシャルの到来だ。

今日まで、ブランドは動画コンテンツを通じて自らをアピールしてきた。そして、ソーシャルメディアや動画配信プラットフォームの台頭が、あらたな時代のはじまり告げた。デジタルエイジにおける消費者行動の変化に伴い、ブランドは短編ドキュメンタリーからショートコメディまで、さまざまな動画コンテンツを送り出すようになった。

BMWが2001年から2002年にかけて配信したThe Hireは8つのショートフィルムからなり、デビッド・フィンチャーがプロデュースし、クライブ・オーウェンが主演を務めたことでも話題を呼んだ。

フェロー諸島の観光団体であるVisit Faroe Islandsは、同国がGoogleストリートビューやGoogle翻訳のサポート外であることを逆手に取り、島の名所などをコメディタッチで紹介するビデオコンテンツを製作した。

グローバルブランドだけでなく、多くの国内ブランドもBranded videoを活用している。北欧、暮らしの道具店はYouTubeでオリジナル短編ドラマを配信しており、100万回以上の再生回数を誇る。

Nownessなどのオンラインチャンネルは、クリエイティブな動画コンテンツの配信に注力しており、ファッションブランドが自らのスタイルを発信するために活用されている。


Branded videoの効果

Branded videoはブランドのビジョンなど、ことばだけでは伝えづらいメッセージを直感的に表現できるため、ターゲット顧客のエンゲージメントを向上するためには最適といえる。クリエイティビティにあふれる動画コンテンツは、ブランドに触れ、そのDNAを見て感じてもらうためには、この上ないツールなのだ。

このことはとくに、B2Bブランドがより幅広いオーディエンスとコミュニケーションを行う際に重要となる。例えば教育支援を行っていることをことばで伝えるのと、奨学金プログラムの内容をエモーショナルな映像で伝えるのとでは、おおきく差がある。

バンクーバー創業のディベロッパー、ウエストバンクは、日本を代表する建築家である隈研吾とコラボレーションした短編ドキュメンタリーを配信している。動画のスタイルからは、同ブランドがたいせつにしているアート、クラフトマンシップ、美的感覚などの要素を感じられる。

製造業の分野では、Branded videoは製品をいつもと違う目線で紹介するために役立つ。セットを用いて演出をほどこし、製品の質をアピールできる。そして、映像のなかで人物あるいは動物がその製品を実際につかうことで、カタログのみではわかりづらい価値も、視聴者に伝えることができるのだ。

ティファニージャパンは結婚情報誌ゼクシィとコラボレーションを行い、ショートフィルムを製作している。製品に直接焦点を当てるのではなく、ドラマのストーリーを通じてブランドのメッセージを読み取れるようなつくりになっている。


Branded videoのつくり方

前述の通り、Branded videoにおいて、より重要なのは「クリエイティブ」の部分だ。製作にあたっては、ブランドの理念とビジョンを深く理解しているチームと組むことが理想といえる。ブランドの「守り人」として、クリエイティビティとブランドガイドラインで定められた表現の折り合いをつけるためには、いくつか配慮すべき点がある。

1. ブランドの真実

映像に関する明確な規定がないかぎり、かならずしもブランドガイドラインに沿ってBranded videoをつくる必要はない。色に関する規定や行間隔などにこだわるよりも、ブランドのエッセンス、すなわち「ブランドの真実」をいかに伝えるかを重要視すべきだ。クリエイティブディレクションをはじめとするあらゆる要素において、「ブランドの理念を体現しているかどうか」が判断基準となる。

スクリーン上でもブランドのDNAが感じられるよう徹底するためには、インハウスであるかエージェンシーであるかを問わず、クリエイティブチームとのディスカッションは不可欠だ。チーム全員が同じイメージをシェアすることで、映像になった際にもズレがなくなる。

2. 視覚的要素

動画において、視覚的要素は単純なロゴやカラーパレットにとどまらない。ブランドのビジュアルアイデンティティは、照明やカメラアングルをはじめ、さまざまな要素によって顕在化する。アートディレクション、セット、コスチューム、背景、小道具、あらゆるものが「ブランドの真実」を捉えていなければならない。

3. 音響

音響にも配慮が必要だ。最適なBGMを選び、音量も注意深くコントロールしなければならない。ナレーションが入る場合は、声質や語り口がブランドらしいものどうか、確認しておくべきだ。

4. 編集

ロングショットか、あるいはこまかくカットを入れるのか。動画のリズムやペースも、ブランドらしさを伝える一要素といえる。それがブランドにふさわしいものか、そしてターゲットオーディエンスに最適かどうか。ブランドの価値観と動画のペースは相反していないか。例えばブランドが「わかさ」「フレッシュさ」とひもづいているのであれば、編集はよりダイナミックにすべきだ。反対にブランドが「マインドフルネス」を主張しているのであれば、ペースはゆったりとしたものになる。

5. 動画の長さ

動画の長さを決める際も、ターゲットオーディエンスが重要となる。これにもとづき、どの配信プラットフォームを活用すべきか判断すべきだ。ターゲットオーディエンスがInstagramやTikTokユーザーではないのならば、これらのメディアへの配慮は不要といえる。