ウソをつかない「ブランドの理念」

誠実さとエンゲージメントが鍵をにぎるブランディングコミュニケーション

2019. 11. 23

ダイアナ・チェン(サステナビリティ・アナリスト)/ スティーブ・マーティン (Eat Creative共同創業者)

2025年にはジェネレーションYが世界の労働人口の75%を占めるといわれています。2020年にはジェネレーションZが消費者人口の40%に到達。シニアレベルやエグゼクティブレベルのベビーブーマーたちでさえ、企業人としても顧客としても、こうした「ニュージェネレーション」に順応していく必要に迫られています。ブランドが成長し、これから先の未来においても魅力的でありつづける上でも、このふたつのジェネレーションのニーズに応えることはとても重要です。

ジェネレーションZについては、マッキンゼー・アンド・カンパニーが詳細なレポートを発行しています。

このレポートにもあるように、顧客はブランドが自らの理念にコミットしているかどうか、よりきびしい目を向けるようになっています。自らの理念を定めるだけでなく、実際に行動し、その理念を体現しているかどうか。これは消費者だけでなく、社員にとっても同様です。雇用安定はどのジェネレーションにとっても理想ですが、ニュージェネレーションは、自らの行動規範や価値観に合ったシゴトに就くことをとりわけたいせつにしています。

コミットメントについて、ブランドのことばで発信する

ブランドの行動だけでなく、どういったコンテンツを通じて発信しているかも、ブランドへのエンゲージメントに影響します。どのような方法で、ブランドの行動を人びとに伝えるためのコンテンツをつくっていくのか。これまでトップダウンで決められていたブランドのメッセージやコンテンツは、国や部門を超えてさまざまなステークホルダーが取り組むよりインクルーシブなものへと変化し、ブランドに関わる人びとが自分ごととして捉えられるものになりつつあります。

正直に、包み隠さず伝える

社会が変化するスピードが早くなるにつれ、未来を読むことはこれまで以上にむずかしくなっています。気候変動や新型コロナウイルス終息後の社会のあり方、絶えず進化を続けるテクノロジーなど、予測できるものなどないように思えるほどです。このような環境においても存在感を発揮するブランドで居つづけるためには、クリエイティビティとリスクテイクが不可欠ですが、これらは同時にブランドの停滞や失速につながる場合もあります。そんなとき、成長や成功だけでなく、失敗や課題について包み隠さず発信することは、ブランドへの信頼感の獲得につながります。

オートリーの2018年度版サステナビリティレポートは「昨年よりも少し数値が悪いです!」と題され、ブランドの課題を包み隠さず伝えています。

グローバルな視点をもって、ローカルに取り組む

ビジネスが事業計画を策定する際は、さまざまな競合や国際的なフレームワークがベンチマークになることがほとんどです。しかし、実際に行動する上では、ブランドとより関係の深いコミュニティに寄り添った、ローカルな視点をもつことが重要です。ローカルな課題の解決をゴールに設定し、これにひもづいたメッセージを発信していくことにより、社員だけでなく、ローカル市場の潜在顧客や未来の社員たちのエンゲージメントも同時に高められます。 

ダノンではエコシステムファンドを設立し、ブランドの成長がローカルコミュニティの成長につながるシステムをつくっています。これには循環型農業の推進に向けた研修や投資、持続可能な投資をおこなえるよう安定した契約を結ぶといった取り組みも含まれています。

人間らしくある

ブランドが行動する際もコミュニケーションを行う際も、「人間らしく」あることはたいせつです。ブランドのターゲットとなる人びとは日々さまざまな情報に触れており、そのひとつひとつを入念に調べている時間もありません。デジタルネイティブの関心を引くためには、短く、クリエイティブで、わかりやすく簡潔なコンテンツが求められます。

また、ブランドが取り組むプロジェクトやその成果について伝えるときは、中心となった人びとを取り上げることが効果的です。ブランドは、そこではたらく人びとによって成り立っており、情報に「顔をつける」、すなわち社員にスポットライトを当てることは、ブランドへのエンゲージメント向上においては重要です。

たとえばマイクロソフトのInstagramでは、社員をコミュニケーションの中心に置いています。先日発表された同ブランドのダイバーシティレポートは、マイクロソフトが「人間らしい」ブランドを志すにあたり、その背景とゴールを詳しく伝えています。

デジタル化を軽視しない

ブランドのメッセージは、オンラインレポートやSNSを通じて発信されることで、より多くの人びとに届きます。コスト面だけでなく、とりわけ「ニュージェネレーション」に向けたコミュニケーションのためには、デジタルメディアは不可欠です。 

とはいえ、「重役たちが手に取って読めるものをつくる」というレガシーがあるケースも多く見られます。これを払拭するためには、プロジェクト立ち上げの際、ペーパーレスをあらかじめ視野に入れて議論し、コンセンサスを形成しておくことが求められます。デジタル化によるインタラクティブデザインや、今後ブランドが成長していく上で重要となる顧客層とのエンゲージメントの向上といったメリットは、軽視されるべきではありません。

キングフィッシャーでは、サステナビリティレポートをプリントではできない、よりインタラクティブなかたちで発信しています。