寿司からSUSHIへ
Eat 13号: Exile

この記事は2003年2月に公開されたものです。
大いなる誤解、自由な解釈とともに、故郷を離れた食べ物は異郷でさまざまに変身する。もちろん寿司もその1つ。郷に入っては郷に従え、とばかりに各地でアレンジされたSUSHIメニュー、とくとご覧あれ。

フルーツ握り/ココナツ飯、イチゴやマンゴーなど
キムチに焼き肉、クリームチーズにバジルと松の実、炒り卵、ソーセージにフライドポテト、そしてハワイや沖縄の食卓には欠かせないスパム……。テーブルに並べてみれば、統一感がないこと甚だしいこれらの食材、じつはすべて寿司ネタだと聞いたら日本人であるあなたはどう思うのだろう。魚がないぞ、魚が!スパムって一体何だよ?寿司はカウンターに座ってしか食べないという正統派からはそんな声も聞こえてきそうだけれど、日本を飛び出した寿司は世界各地で自由奔放な解釈とバリエーションとともに受け入れられ、欧米ではもはやブームなどという言葉を超えたSUSHIとして定着しているのだ。

キムチ握り/キムチ、海苔
生魚を使っていない寿司なんて、伝統的なにぎり寿司からみればしょせん亜流に過ぎないんじゃない?という方々に講釈を1つ。日本人の大半が、これぞニッポン料理と信じているにぎり寿司が登場するのは19世紀前半。関東大震災以降全国に普及するまで東京(江戸)だけで食されていた寿司は、歩き売りや屋台で売られていたようにごくごく庶民的な食べ物で、それ以前、寿司といえば関西で主流の押し寿司、さらにさかのぼれば保存を目的とした熟鮨が一般的だったのだ。

キャタピラロール/アナゴ、カニ、海苔、キュウリ、アボカド
寿司は寿司職人だけが作ることを許されたもの、値段が高くても、金額が表示されていなくても、新鮮な魚を最高の寿司にしてくれればいいという人ももちろんいるだろう。だけど、野菜であれチーズやハムであれ、お米とミックスしていれば寿司という自由さが、寿司という食べ物の敷居の高さを下げてくれたことだけは多分間違いないはず。

左から右:サーモンスキン・ロール/鮭の皮、キュウリ、海苔。メキシカン・ブレックファストロール/いり卵、ソーセージ、フライドポテト、サルサ。ファンタジーロール/アナゴ、カニ、海苔、キュウリ、白ごま、サーモン、マグロ。焼き肉握り/焼き肉、海苔。フィラデルフィア・ロール/サーモン、クリームチーズ、かいわれブロッコリー、海苔。ペスト握り/バジリコ、松の実、ニンニク。
文/ Eatチーム 撮影/ 森山あゆみ